残念ながら会社代表者の努力が報われず,会社経営の先行きに見通しが立たず,借入のリスケジュールも困難で支払の目処が立たない場合,最終手段は会社の破産となります。
まず最初に申し上げますが,経営難により会社が倒産(破産)することは,リスクがない会社経営など有り得ない以上,それ自体やむを得ないことであって,道徳的に「悪い」ことではないということです。
苦労された社長の中には自らの責任と思いつめ,自ら命を絶って保険金で返済しようとまで思いつめる方がいらっしゃいます。しかし,不景気,環境の変化,業界自体の衰退など,どうしようもないこともあります。結果的に取引先に迷惑をかけることになったとしても,社長はいままで最大限頑張ってこられたはずです。世の中にはどうにもならないこともあるのであって,必要以上の責任を感ずる必要はないのです。誤った形の解決は絶対にやめていただきたいと思います。
会社の破産とは,簡単にいえば,会社の資産を公平に債権者に対して分配した上で,会社を清算する手続です。銀行や国金の借入,買掛金や滞納税金を含め,会社の一切の負債は,返済不要となり,会社自体もなくなります。
会社が破産をすると会社としては消滅しますので,それ以降,社長が会社に対して責任を負うことはなくなります。経営難の中で苦労を重ねてきた社長にとっても,会社破産の手続の諸事が終われば会社経営は一段落となります。
社長は社長職を離れますので,以降は別の会社に雇われて勤務をすることも可能ですし,場合によっては時期をみてまた別会社を設立し,社長業を再開することも法的な制限はありません。
社長ご自身の判断にて,また次の人生の歩み方を決めていただきたいと思います。
会社の破産により債権者は債権が回収不能となり大きな不利益を被ります。
しかし,破産手続の中で,債権者は会社に残った資産について債権額に比例した公平な割合で配当を受けることができます。
会社に資産がまったくなく,債権者への配当がなかったとしても,会社の破産により,会社の財務状況が開示され,会社が破産に至った経緯を知ることができますので,債権者としてもある意味での納得性を得ることができます(これを「情報の配当」ということがあります。)。
また,こちらが破産することにより,税法上,未回収金について貸倒処理ができることとなり,結果として法人税が安くなります。債権者にとっても,回収の見込みのない不良債権を抱え続けるより,かえってありがたいという話をしばしば耳にするところです。
会社の倒産準備には弁護士の関与が絶対に必要です。
弁護士が関与しない会社の倒産は,社長が夜逃げしてしまって後に従業員が残され困るとか,会社に取引先が押しかけ在庫を奪っていき混乱が生じるとか,金融機関が不良債権処理できずに困るとか,周囲に多大な迷惑をかけてしまうことになりがちです。
社長が将来の再起を考えたときにも,過去の清算が済んでいないということでは,やり直しも困難です。
会社の破産・倒産の際は必ず弁護士にご相談ください。
会社が営業中であり,従業員がいる場合,会社の廃業により従業員は解雇しなければなりません。
従業員にとって会社の倒産は一大事ですから,解雇の際は様々な混乱が生じるでしょう。混乱を防ぐため,通常,廃業時には社長と弁護士が同席した解雇説明会を開催し,弁護士が未払い賃金,退職金についてや,解雇時の雇用保険や健康保険などの諸手続について従業員の皆様に説明し,従業員の皆様を最後までサポートします。
これは事案によりますが,会社の関係先に弁護士の受任通知を送付し,社長に連絡をしないよう求めたり,破産手続の進行を待つよう求める場合があります。債権者や関係先も会社倒産の際に不合理な処理がなされないだろうことについて一定の安心をするでしょうし,以後の関係者との連絡は弁護士が受け持ちますので,社長も安心です。
会社が廃業しても,そのことで会社が持つ権利がなくなるわけではありませんから,例えば会社に未回収の売掛金がある場合,廃業後であっても取引先に請求し,これを回収します。破産にも手続費用がかかりますが,破産の手続費用が不足していても,売掛金の回収により賄えるケースがしばしばあります。
弁護士の経験上,会社の破産は手持ちの運転資金が尽きたことを契機にご相談いただくことが多いため,破産の手続費用が即金で用意できるケースはむしろ少ないといえます。手続費用の準備の仕方についても弁護士にご相談ください。
社長もご承知のとおり,中小企業の借入の際,金融機関は会社代表者の個人保証を求めるのが通常です。近年では個人保証の問題が指摘されるようになり,旧国民政策金融公庫(日本政策金融公庫)では社長の個人保証を求めない貸付が行われていますが,それでも多くの場合で社長が個人保証が付いており,信用保証協会の制度融資も同様です。
会社の借入に会社代表者の個人保証が付いていますと,会社の破産により会社の負債がなくなったとしても,会社代表者の保証債務が残ったままですから,会社代表者が個人として借金支払の督促を受けてしまうという問題があります。
これを避けるためには,会社代表者も会社と同時に何らかの債務整理をする必要があります。債務整理の方法には任意整理や個人再生もありますが,会社の保証債務は個人の支払い能力に比して金額が膨大であることが多いため,代表者に何か特殊な事情がない限りは,代表者も会社と一緒に自己破産をするのが通常でしょう。
例えば東京地方裁判所に会社の自己破産を申立てる場合,代表者の自己破産を同時に申立てることができ,会社と代表者個人とを同時に破産処理することが可能であり,小規模な会社であれば裁判所に収める予納金は代表者とあわせて原則20万円と,個人がひとりで破産する場合と変わらない金額で済みます(弁護士が申立代理人を務め,多大な管財業務が見込まれない場合のみ)。
破産というと昔は誤解や偏見があったものですが,弁護士としていわせていただけば,自己破産は,決してこわいものではありません。通常は他人に知られることも,生活用品がなくなることもなく,戸籍に載ることもありません。現に毎年10万人前後の方が自己破産により借金をなくして再スタートを切っています(詳しくは自己破産の解説をご覧ください。)。
米国大統領となったドナルドトランプは,過去4回破産したそうです。破産のたびにやり直し,経験から学び事業を工夫して,最後は大統領まで上り詰めました。そこまでの話は日本ではなかなかないかもしれませんが,米国同様,日本でも破産は,ある意味では前向きな制度であります。すなわち,破産とは国が認めたやり直しの制度なのです。会社経営で苦労をされた貴重な経験を有する社長にこそ,今一度やり直していただくことが,まわりまわって世の中のためになることに疑いはないのです。
オリオン法律事務所横浜[横浜]では会社破産や会社代表者の破産をご依頼いただけます。会社の破産については横浜の弁護士にご相談ください。
弁護士 笹浪 靖史
以下は平成30年以降のオリオン法律事務所での法人破産申立の一部の例となります。 会社の破産は会社毎に状況が千差万別ですが,弊所では様々な工夫により,会社あるいは代表者にとり実現可能で,かつ,債権者にも不当な影響のない,適正な破産申立を心がけています。
従業員数6名,負債総額約1億3000万円,債権者等関係先約70社の精密機械部品製造業者の破産申立を行いました。
社長との協議により会社破産の方針決定後,従業員に対する解雇説明会を開催し,即時解雇とし,工場は破産申立前に閉鎖保全しました。
会社破産の手続費用が不足していたため,売掛金の回収等を行い,会社破産の手続費用の工面をし,従業員の未払い賃金・解雇予告手当・退職金の支給をした後,速やかに破産申立を行いました。
社長のご配慮もあり,破産申立前に従業員給与をすべて支払うことができ,従業員の皆様へのご迷惑を最低限に留めた破産申立となりました。
比較的小規模の事業者でしたが,破産申立費用が工面できないという問題がありました。
裁判所に求められる予納金を低額とするため,会社事務所等の複数の不動産の明渡しを予め行った後の破産申立を検討しました。
不動産の賃料を何年も滞納していた上,不動産内に多数の廃棄物が存在したままでの明渡しとせざるをえなかったため,明渡協議の難航が予想されましたが,破産手続を行う以上,もはや賃料の支払も廃棄物の処理費用も負担できないことをご理解いただき,現状そのままで複数の不動産の明渡しを行いました。
その他,会社名義の自動車の処分等を行い予納金等手続費用の工面を行いました。
負債総額2000万円,債権者等関係先約20社の飲食店の破産申立を行いました。
会社が依頼前に行った事業譲渡の適法性の確認や,代表者の遺産分割未了の相続財産について遺産分割の検討,住居の移転を行いました。
その他,元従業員の代理人弁護士より未払い残業代の請求がありましたので,破産手続の中で一括して対応いたしました。
負債総額800万円,債権者等関係先約10社のイベント会社の破産申立を行いました。
破産の手続費用が不足していたため,売掛金の回収や会社が所有するパソコン等の動産の売却をし,会社破産の手続費用の工面をしています。
代表者については分割払にて代表者破産の費用をご捻出いただきました。
負債総額約2億円,債権者等関係先約50社のプラスチック製品製造会社の破産申立を行いました。
従業員十数名の解雇を行った上,破産の手続費用が不足していたため,売掛金の回収を行い会社破産の手続費用の工面をしています。
社長のご希望もあり,回収した売掛金から解雇予告手当の支払を行い,最大限関係先に不利益のない形で対応いたしました。
負債総額2億円,関連会社所有分を含めアパートなど不動産物件を6件所有する不動産賃貸会社の破産申立を行いました。
元々不動産投資の一環として会社を設立し事業を行っていたものですが,不動産の買値が相場より高く債務超過であり,まったく将来性も見込めないことから自己破産申立を行ったものです。
法的には様々な問題がありましたが,最終的に会社破産が認められた上,代表者・役員含め無事免責決定を得て,現在社長は人生の再スタートをされています。
会社と代表者とは法的には別の存在だという建前がありますので,会社の破産の費用については,原則的に代表者からではなく会社自身の資産(会社の現金,預金,売掛金など)から支出する必要があり,代表者の破産については代表者の資産から支出するのが原則です。
費用の準備の仕方については様々なケースがありますので弁護士と打合せをなさって下さい。
会社の破産は資産や従業員の数,取引先の状況等個別の事情により作業量が大きく異なるため,以下は目安の金額です。大まかに言って会社が営業中かどうか,従業員・不動産・在庫の有無,早期対応の必要性により弁護士費用が異なります。
・既に廃業しており特段の問題がない場合 着手金 30万円
・従業員,不動産及び在庫がなく特段の問題がない場合 着手金 40万円
※不動産の明渡しや従業員の解雇に付随する事務の代行,弁護士による解雇の説明会への同席,廃業後の売掛金回収による手続費用充当などを行う必要がある事案の報酬は以下のとおりです。
・関係先25社未満かつ負債総額7000万円未満 着手金 65万円
・関係先40社未満かつ負債総額1億円未満 着手金 80万円
・関係先60社未満かつ負債総額1億5,000万円未満 着手金 120万円
・関係先80社未満かつ負債総額2億円未満 着手金 160万円
・関係先80社以上または負債総額2億円以上 着手金 別途見積り
※手続が成功した場合に生ずる「報酬金」はいただきません。
※税別表記です。事業所への出張が必要な場合は別途日当がかかります。
※同時に会社代表者の破産等の債務整理を行う場合は別途個人の債務整理費用がかかります。
・少額管財の場合 予納金20万円
※別途,官報公告費や印紙代等の実費がかかります。
※多大な管財業務が見込まれ少額管財として扱われない場合,予納金は70万円〜となります。予納金額の見込については弁護士にご相談ください。
オリオン法律事務所横浜支部では会社破産申立の経験豊富な弁護士が会社の破産・倒産のご相談をお受けしています。
株式会社や合同会社の破産・倒産については本ページの記載のほか,右記特設サイトをご参照下さい。
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