A.弁護士に個人再生を依頼して借金がいくら減額されるかは,一番気になるところだと思います。
ところが,一番気になるところでありながら,すぐに即答はできないのが悩ましいご質問です。
といいますのも,個人再生でいくら支払うかというのは,3つの基準があり,依頼者の方の状況に応じてその3つの基準のどれかが決まり,計算されますので,まずは依頼者の方の状況をよく確認しないと,いくらになるとはいえないのです。
また,個人再生を申立する裁判所によっても多少運用が異なりますので,日本全国一律というわけでもありません。以下,横浜地裁の個人再生の運用を前提として記載します。
3つの基準の概略は,以下のとおりです。
1.総債務額による基準(住宅資金特別条項を使う住宅ローンは参入しません。Q&A住宅資金特別条項参照)
・総債務額が100万円未満であればその金額
・100万円以上500万円未満であれば100万円
・500万円以上1500万円以下であれば5分の1
・1500万円以上3000万円未満であれば300万円
・3000万円以上5000万円未満であれば10分の1
2.清算価値による基準
・以下を合計した金額
現金(99万円を超える部分)
預金・貯金(20万円を超える場合)
貸付金・過払金
社内積立金等
退職金の8分の1(仮に自己都合退社をしたとして8分の1が20万円を超える場合)
保険解約返戻金(保険合計で20万円を超える場合)
有価証券
自動車・二輪車(時価が20万円を超える場合)
高価品等(時価)
不動産(査定額)
居住住宅の敷金
その他の権利等の相当額
※住宅ローン付き住宅の場合はアンダーローン金額(Q&Aアンダーローン住宅の個人再生参照)
3.可処分所得による基準(給与所得者等再生の場合のみ。Q&A給与所得者等再生参照)
・可処分所得の2年分
個人再生ではこれら1.2.3.の三つの基準についてそれぞれ計算し,このうち一番高い金額を3年間または5年間で支払うことになります。
このうち2.の清算価値基準については,横浜地裁と東京地裁とでは運用が異なるところです。
すなわち,横浜地裁では各財産類型ごとにすべての財産価値を合計するのに対し(ただし預金,保険解約金,自動車,退職金の8分の1は20万未満の時計上なし),東京地裁ではほとんどの財産類型について20万円に満たない場合は価値をゼロとして扱いカウントを行いません。
したがって,横浜地裁の運用の方が清算価値が若干高く計算されることが多いと思われます。
このように,個人再生は元々複雑な手続である上,裁判所ごとに運用も異なります。
この清算価値の考え方の差の他,大きな違いとしては,東京地裁は個人再生委員が必ず選任されますし,横浜地裁では弁護士申立ての場合は原則的に個人再生委員は選任されません(個人再生委員とは何かについてはこちらのQ&A参照)。
依頼者様によっては横浜地裁でも申立ができるし,東京地裁でも申立ができるというケースがあります(横浜在住東京勤務のケースなど。)。
そうした場合,どちらの裁判所に個人再生の申立をするかは,依頼者様にとって最も有利な手続の実現という観点から,実際上の一つのポイントです。
例えば,1.の総債務額による基準や3.の可処分所得基準の再生計画が見込まれるのであれば影響はありませんが,いろいろな財産をお持ちの方で2.清算価値基準になることが見込まれる場合は東京で申立てをしたほうが若干再生計画の支払額が少なく計算され有利な場合があります。
オリオン法律事務所では個人再生の経験が豊富です。
個人再生をご相談頂く際には,ご事情を伺い,資料をある程度お持ち頂けば,横浜地裁や東京地裁の運用を踏まえた上で個人民事再生で支払うことになる目安の金額をお伝えできますので,それを踏まえて一番良い債務整理の方法をご提案させて頂けます。
もっとも,お伝えできる金額はあくまで目安であり,個人民事再生の実際の支払額がいくらになるか正式に決まるのは申立てた後,再生計画認可決定の時になりますので,その点だけご了承下さい。
個人再生についてご質問のある方は,お気軽に横浜の弁護士にご相談下さい。
弁護士 笹浪 靖史
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